『 抗菌薬適正使用のお話。 』
2018年8月2日
白金いびき・内科クリニック 院長の内田 晃司(うちだ こうじ)です。
暑い日が続いております。熱中症にならないよう、体温調節をお願い致します。
本日は『 抗菌薬適正使用のお話。 』を致します。
私の専門は、喉や気管や肺を主に診察させて頂く呼吸器内科です。喉や気管や肺は、呼吸を行うため体の外と繋がっていますので、どうしても空気中のバイ菌が体に入り込んで感染しやすい臓器です。ですので呼吸器内科は、バイ菌の感染症を拝見させて頂く機会が多い診療科となります。
私達の体に入り込むバイ菌には、ウイルス・細菌・真菌(=カビの事です)の3種類があります。抗菌薬や抗生物質と言われる薬は、細菌にしか効かずウイルスには全く効きません。そして私達が時折罹ってしまう感冒(=風邪の事です)・急性副鼻腔炎・急性咽頭炎・急性気管支炎と言われる気道感染症の原因となるバイ菌は、7割~9割がウイルスです。1割~3割の細菌感染が原因であったとしても、外来通院可能な程の軽症である場合は各学会でも、抗菌薬は通常使用しない指針となっています。ですので風邪や副鼻腔炎に抗生剤を使用する事は少ないです。それどころか、抗菌薬は副作用としての下痢や、耐性菌出現を助長します(現在の医療現場では、MRSAやVREと言われる薬剤耐性菌の増加に頭を悩ませています)。
少し細かい話をすると、副鼻腔炎に関しては中等症・重症と判断された場合には抗菌薬使用を検討する事が推奨されています。中にはウイルス感染後の細菌の二次感染予防のために有効と言われる方がいらっしゃるかもしれませんが、かなり昔に学術的に否定されています。もちろん、念のためという理由でお出しする事はありません。また、溶連菌感染症などの抗菌薬が劇的に有効な疾患には使用する事が推奨されます。
ですので、「 抗菌薬は必要がある方に必要な量と期間だけ使用しましょう 。」と厚生労働省や各学会が昔から提示しています。私達の外来診察では、バイ菌による感染症の方も多く受診して頂いておりますが、上記の理由で抗菌薬や抗生物質をお出しする機会はかなり少ないと思います。
では治療はどうしているの?と思われるかもしれませんが、感冒や気管支炎などの原因ウイルスは、皆さんの体が時間をかけて自然と排除しているのです。これは抗菌薬を内服していようと、していまいと時間や症状の改善に差はありません。私達がお手伝い出来る事は、つらい症状をお薬で取り除く事です。熱が出れば解熱剤、痛みがあれば鎮痛剤、痰が絡めば去痰剤といった具合です。すべて皆さんが自力で治しているのです。
抗生剤や抗生物質を頻回に内服していると、下痢になったり、将来いざという時にすでに耐性菌が出現している確率が高くなりますので、しっかりとした診断の上で、必要な治療を必要な分だけ行う事をお勧め致します。
以上、本日は『 抗菌薬適正使用のお話。 』をさせて頂きました。